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April 27, 2005

第5話 時間の概念

 フィリピンの人は時間にルーズという定説が日本では一般的であり、フィリピンタイムなる言葉も存在するくらいだ。しかしこの捉え方は表面的だ。物事の多少のブレは気にしない、という価値観が時間に関する自己管理にも表れているだけだ。それでも時間にルーズというこの事実はあまりにも目立つ。
 会社は8時が始業時刻である。我々日本人スタッフは7時に宿舎を出るから、大体いつも7時半までには会社に到着している。私は時々散歩がてら朝の短いミーティングのあと構内を歩いた。8時も回れば南国特有の日差しが眩しい。入場口付近を見ると、いつも定時を過ぎてもパラパラと入門してくる者がいるのだ。遅刻者は一定の基準で減給されているので、一応のペナルティはあるわけだが、管理上好ましいことではない。たまたま通りがかった元総務部長でその時の技術部長M氏に聞いた。M部長は、宗教的には位が高く、社員からも尊敬を集めている人物である。「もう随分定時を過ぎているけれど、いつもこんな状況?」「そうですけど、遅刻って言ったって、たったの15分ですよ~」
 ところが驚くことに、帰りはどうかというと、定時の5時前にはタイムカードの打刻機の前には、長蛇の列になっているのだ。要は、定時まで仕事をしていない、と言うことなのだが、現場の責任者も見て見ぬ振りをしているのだ。出来るだけお互いに争いを起こしたくない、というのが彼らのメンタリティである。言われるまでは気が付かなかったことにすりゃあいい。おっと、どこかの民族も案外一緒だったりして・・・

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April 26, 2005

4話 そんなバカな!その1(2)

 床板はその日の夕方になっても来る気配はなく、さすがのM課長も私の険しい表情を察して、請負会社の社長を呼びつけた。社長は捲くし立てるようにビサヤ語で何か喋ったかと思うと突然泣き出した。本当に。(フィリピンでは泣けば何でも許してくれるというカルチャーがある、とは聞いてはいたが)ビサヤ語であーだこーだ言っているが私には何だか分からない。分かったのはM課長はこの請負会社の社長にすっかり感情移入してしまって、少なくとも彼はこの請負会社の社長を許してしまっているということだ。曰く、まだバンタヤンという島で板のカットをやっている。明日出荷する予定だ。私はこの明日出荷ということも信用せず、残された日程から、とにかく開始日から起算して8日以内に間仕切り工事が完了できなかったら賠償金を支払う、というメモを即興で作り、社長にサインをさせた。この社長はうなずいてサインをするよりすべがなかった。このメモとサインの有効性ははっきり言って自信はなかったが、プレッシャーにはなったようだ。
 結局、床板は工事開始日から7日目に到着し、最終日の突貫工事でどうにか完成した。しかし、ブラストの粉塵が飛び散り、連休明けの仕事は各自拭き掃除から始まったことは言うまでもない。
プロジェクトの進捗は現地人任せではとんでもないことになる。大きな教訓であった。それにしても、M課長の直属の上司の総務部長Tは休暇中ということで、期間中最後まで姿を見せなかった。敬虔なローマンカトリックのT部長の価値観ではホリーウィーク中は宗教上の価値観が全てのことに上回るということだろう。ヤレヤレ。

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April 24, 2005

4話 そんなバカな!その1(1)

 フィリピンで仕事をする者にとって大きなストレスのひとつは、約束した通りのことになっていないことが多いということだ。
 赴任してしばらくして、応接室をリニューアルすることになった。ちょうど会社ではホリーウィークがらみで8日間の休みとなる。間仕切りを行い、ドアをつけクロスを貼る、そんな工事で、期間は4日間と見積もられた。彼らが言うことをそのまま額面どおり受取ることは最早なかったが、せいぜい2日くらいアロウアンスを見れば何とかなるだろう。しかしそれでもホリーウィークがらみで本当に期間中仕事をやるのか心配だった。メンテナンス課長のMに確認すると、ホリーウィーク中でも仕事への影響はない。問題ない。手を振りながら笑顔で答えてきた。さて工事が始まり、休み中ではあったが私は様子を確認に出社した。工事は始まっている。古い間仕切りの解体はすぐに終わり、1日目は順調に進んでいるように思われた。さて、2日目。作業者はいるのだが、工事をやっているようには見えない。ガランとしたスペースではなんと、ラジカセで音楽を聴きながら、作業者はゴロンと横たわっている。どう見ても工事は中断している。M課長を自宅から呼び出し、状況を問いただした。相変わらず、彼は笑顔で「ダイジョブー、モンダイナイ」。彼が大丈夫という根拠は、請負会社の社長が大丈夫だと言っている、という全く心もとないものだったが、かれは胸を張って「ダイジョブー」を連発した。
 果たして3日目。部材が到着した気配すらなく、相変わらず、作業者はガランとしたスペースで歌を歌っている。さすがのM課長も心配になり、盛んに問い合わせをしている。床に貼る板は今こちらに向かっている。到着次第すぐに貼るから納期には間に合う。心配顔だった彼も、再び元の笑顔に戻っていた。
ところがその日の何時になっても、ついに板は到着しなかった。 ・・・つづく

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April 23, 2005

第3話 ジョブディスクリプション(2)

 職務明細とは、部署の課題や仕事の目標を達成するためになすべき業務を一定の範囲で括って表現したものである。従って、そもそもやるべき仕事の分担は各自が思い思いに決めるのでなく、上司が決めるべきことのはずだ。例えばこんなのがあった。
 ・ドライバー同士の喧嘩の仲裁
 ・日本人駐在者が起こした交通事故の示談交渉
 ・親会社から出張で来た人のみやげ物の手配
 これらは、総務課長の職務明細に書かれていた項目ごくの一部であるが、他の項目も大体こんな調子である。要するに最近自分がやったことを並べているのだ。悪いことに、これらの職務明細に照らして、後々の人事考課で自己アピールしてくるのだから、「私はやるべきことをちゃんとやりました」となってしまう。総務課長ですらこんな具合。しかも、総務部長は部下が出したものをほとんどチェックせずに出してきたも同然だ。部門目標を達成するための個人別の仕事の明細とは程遠く、突き返したのは言うまでもない。やれやれ、こりゃ先が相当思いやられる。仕事をするに当たっての根幹の価値観でベクトルを合わせるだけでも相当のエネルギーが必要なようだ。

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April 22, 2005

第3話 ジョブディスクリプション

 フィリピンのビジネス社会は米国流を真似ている。至るところでアジア南洋流が見え隠れするものの、清紀の部分では間違いなく米国流で秩序が維持されている。代表的なものがジョブディスクリプションと言われる個人別職務明細だ。日本で職務分掌と言えば、組織単位でのミッションという事になるが、ここでは個人別なのだ。製造現場のオペレータは別にして、細かく規定されている。
 が、何かおかしいぞ!私は自部門の数十名のジョブディスクリプションに目を通した。
私の管轄部門は総務部と経理部。総勢で40名ほどだから、全員の仕事振りにはある程度は目が届く。職務分掌の発想からいけば、各自が何をすべきで、その通りの行動と結果に繋がっていることが重要である。私は着任してから、総務部長、経理部長とミーティングを行い、部門方針から重点課題を話し合い、部門の達成目標を提出させてあった。当然、それがブレイクダウンされているだろうと思い、確認するつもりで担当者ごとの職務明細を出させたのだが、想像していたものとは全くかけ離れたものだった。・・・つづく

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April 20, 2005

第2話 サイン(2)

 サインといえば、ちょっとした部下との打ち合わせでも、部下は必ずメモを書いてサインしてくれと言ってくる。これは上下のコミュニケーションの中でも日本にはないスタイルだ。日本では、お互い話に納得したあとで、会議の議事録は別として、「あなた、こう言いましたよね。」とサインをやり取りするということは殆どない。
これには随分やられた。よほどしっかりした原則を自分自身固めておかないと、発生する事態は様々な形で起こるので判断の基準がケースバイケースでぶれてしまい、「あの時はこう言いましたよ」と切り返されてしまうのだ。日本では、部下は変だなと思っても、阿吽の呼吸で飲み込んでしまうところだろう。この手のメモにサインをしたときはコピーをとって持っていた方がよい。
 私のサインはイニシャルをちょっとアレンジしたもので自分では結構気に入っている。使わないとかけなくなってしまうので、国内にいる今でも仕事の確認書類等はこのサインを使っていて、周囲からの評判も悪くない。

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April 19, 2005

第2話 サイン(1)

 欧米社会はサイン社会とも言われる。フィリピンは日常生活は限りなくアジアだが、ことビジネスに関しては間違いなくアメリカ流を踏襲している。私の仕事は管理部門の総括責任者。当然サインすべき書類が多い。日常的な書類や伝票類のサインだけでも相当な枚数にのぼる。ただ単にサインをするという動作だけでも、毎日30分を要した。購入申請、注文書、支払い承認、出金承認など、定例的な書類だけでも毎日最低100枚。日本人はサインは苗字をそのまま筆記体でサインする人が多いが、出来るだけ簡略化したサインを用意した方がいい。そうしないと腱鞘炎になる恐れがあるし、そもそも煩わしい。日本人でも点と棒の組み合わせをサインにしていた人がいたが、要は真似されなければなんでも良いのだ。
 慣れないうちは、一生懸命購入品目や金額の全てを見ながらサインをしていたが、このスタイルは3日と持たずギブアップ。枚数が多すぎてやってられないのだ。秘書の女性はあなたはただサインすればいいのだとアドヴァイスしてくれるが、中身が全く分からずサインするなど、怖くてできるものではない。当面は金額の多いものに関して部下に説明を求めてサインすることにした。それでも中には疑惑のものもあるんだろうな。  つづく・・・

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April 18, 2005

第1話 コッカコーラー!

 とにかく、早朝からうるさいの一言。都会育ちで鶏の鳴き声に慣れていないといえばそうなのだが、毎朝この調子じゃ、先が思いやられる。それにしても鳴き声が日本のトリとは少し違う。日本のトリは、かなりハッキリと「コケコッコー」と聞こえるけれど、なんかヘンだぞ。何度聞いても「コッカコーラー」なのだ。しかも声にパワーがなく、その分どことなく愛嬌を感じないでもない。フィリピンでは多くの家が鶏を飼っていて、朝になるとあちらこちらから大合唱なのだが、やがて気にならなくなり、朝も平然と寝ていられるようになる。ビレッジの中では鶏を飼って入る家はいないように思えるのだが、どこからあんな大きな泣き声が聞こえてくるのか、当分の間不思議に思っていた。私が居た日本人寮では鶏など誰も飼っていないはずだったが・・・(実は1羽いたということが2ヶ月位してから分かった。その1羽の鶏はいづれちょっとした出来事となるのだが、まあ、それは別の機会に)

 それより、寝ていたときに何度もチクッと刺される違和感を感じて目を覚ました。蚊なら飛んでる音で気がつくが、そんな気配もない。明かりをつけてみるとこれといった虫は天井を徘徊しているヤモリ以外には何も見当たらない。刺されたときは痒みを感じるが、朝になると刺されたことも忘れてしまうくらい痕跡は残っていない。やがて数日後にわかったのだが、赤茶色の小さい蟻(本当に小さい)が犯人だった。しかもやがて体に免疫が出来てしまったのか、これまた刺されても平然と寝ていられるようになる。が、始めの2週間くらい、慣れるまでは気持ちのいいものではなかった。

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April 17, 2005

クムスタカ!

今日からフィリピンをテーマにブログデビューです。富嶽庵といいます。

私が滞在していたところは、フィリピンのセブ島。隣にあるマクタン島のMEPZと言われる輸出加工区にある日系企業に3年間勤務し、今も、個人的な付き合いが続いている現地の友人が何人かいます。あちらこちらをソロイソロイし(ブラブラほっつき歩き)、その間に起きた様々な出来事を通じてわかった“フィリピン”について多くの人と語り合い意見交換をしてみたいと思いこのブログを書いていくつもりです。
フィリピンそしてフィリピン人というと何やらアブナイ国そして信用できない人、そんなステレオタイプなイメージが持たれていますね。そんな一面があることは事実ですが、日本人がもっと親しみを感じてもいい、そんな国民性も併せ持っています。絶対!!   読んでくださった方とはそんな気持ちを共有できればと思い、このブログを書くに至った次第です。

フィリピンは三度泣く

フィリピンに赴任する者にとって「フィリピンは三度泣く」という言葉があります。始めに出向を言い渡されたときに思い浮かべるこの国のマイナスイメージで、とんでもないところに飛ばされたと言って泣き、次に現地での仕事で価値観や文化の違いで泣かされ、
やがては、現地の人達との交流でこの国の人達の暖かさがわかり、涙を流して帰任する、
ということです。勿論、腹をたてたまま帰る人もいるとは思いますが。
時間の経過と共に状況も変わってきていると思います。また、他にもこんなこともあるぞ、という体験を私以上にお持ちの方も数多く居られるでしょうから、遠慮なくコメントを頂けたらと思います。そして今も現地で生活して情報発信されている方の有益な生の情報とも連携したいと思います。
パソコンど素人につき、冴えない見栄えのページですが、取敢えずはご勘弁を。どなたかご指導戴けると有難い。それから根っからの無精者なので、毎日継続できるとはとても思えず、その辺は予めご容赦ください。

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