« March 2006 | Main | May 2006 »

April 30, 2006

第115話 アドレナリン

 期限間際までのんびり構え、タイムリミット寸前で慌てて取り掛かるが、予期しない出来事が発生し、こなしていく時間がなくなり、最後は体裁だけ取り繕うので精一杯。我々日本人でもよく見かける光景だ。心当たりがある向きも多いことだろう。
 フィリピン人はこの特性を更に輪をかけたように存分に持ち合わせている。しかし、最後の帳尻合わせの完璧性という意味では、我々日本人のアウトプットよりもはるかに上をゆく。だから、かえって瑕疵がなかなか見つからず、伏流化してしまい、とんでもない大事なところで露呈してしまうことが多い。
 それでも何とかカタチにはこぎつけられる、という意味では、イベントのようなものなら結果は一過性のものだから、非常にうまくいくことがある。私がいた時に創立○年記念の式典を行うことになった。招待者の多くはフィリピン人だから、フィリピンスタイルがベースとなるが、日系企業である以上、そのコンセプトも要求される。
 開催予定時期の概ね3ヶ月ほど前から計画を開始した。プロジェクトチームを組み、彼らも日系企業であることも意識し、それなりに緊張感あるメリハリとインパクトをなんとか入れ込もうとしている。が、アイデアは良いのだが、どうも具体的な行動が非常に悠長に見えてしまうのだ。物事、特に一発勝負的なイベントのようなものは、何が起きるか分からないので、やれることはどんどん前倒しでやらないと、不測の事態への対応は出来なくなる。こんなことで大丈夫なのだろうか・・・

| | Comments (1) | TrackBack (0)

April 28, 2006

第114話 お風呂

 先週、ちょっとした用事で鬼怒川温泉で一晩過ごす機会があった。栄華を誇った当地も見るも無残な閑散さで、夜7時というのに駅前の商店も全て閉まっており、立派な駅前のモニュメントが妙に白々しい。そこに季節外れの雪も追い打ちをかける。
 温泉に浸かりながら思い出した。そう言えば多くのフィリピンの人達は湯に浸かることがなかなか出来ないのだ。通常彼らの入浴スタイルは水のシャワーがほとんどだ。だから慣れていない、恐怖心がある、といったことなどもあろう。でもそれだけでもなさそうだ。我々なら相当ぬるく感じるような湯に浸かっても、まるで火傷でもしたと言わんばかりにびっくりして湯船から飛び出してしまう。勝手な想像だが、ひどく汗をかかない皮膚の構造や平均体温の高さ(平均は大体37度前後だそうだ)なども影響しているのかもしれない。
 日本を訪れたフィリピン人に親切心から日本の文化を紹介しようとして温泉に連れて行く場合もあると思うが、日本文化の体験をあまりに無理強いをするのも可哀相だ。土曜日というのに誰もいない広い露天風呂にて。

| | Comments (17) | TrackBack (0)

April 25, 2006

第113話 マナー

 電車に乗っていると、相変わらず携帯電話の電源をどうしろ、マナーモードがどうだこうだ、と車掌もアナウンスに余念が無い。こんなこと、いちいち車内で啓蒙を行っているような国は他にあるのだろうか。
 私はそもそも電話はあまり好きではない。また他人の電話の内容にも興味はない。それに個人的には携帯で喋っている人が隣にいたとしてもそれほどストレスを感じない。第一、うるさいということなら、女子高生の会話や酔っ払いの会話の方がはるかにうるさい。であれば、車掌は“通話はお控えください”でなく“車内における会話はお控えください”でないとおかしい。さてフィリピンでは・・・
 当然、何でもOKである。いかなる公共の場所はもとより、会議中でも私的な電話がかかってくれば遠慮することなく応じている。慣れない頃は私も訝ってみていたものだが、慣れてしまえば、さして迷惑をかけられているとも思えず、逆に自分にかかってきた電話もどんな場所でも応じることが出来るので案外悪くない(会議中下を向いてテキスト打ちに熱中していた某マネージャは論外として)。要はお互い様と、それぞれが認識していればそうそう目くじらを立てることなどなかろう。
 公の場所での携帯電話のあり方については、個人的にはフィリピンスタイルに軍配を上げたい。列車の客車では通話が出来ないからと、デッキに出てきて通話する。ちょっとおかしくないか。客車の中の座っている乗客には迷惑はかけられないが、デッキで立っている乗客なら無視してよいという。どうも日本人のマナーは支離滅裂だ。

| | Comments (2) | TrackBack (0)

April 23, 2006

第112話 タガログとビサヤ

 最近のフィリピン関連のニュースによれば、国民の英語力の低下がより進んでいるそうだ。この国では国民の英語力が高い、と言う点が外資を呼び込むためのセールスポイントになっているわけだから、少なからず深刻な問題であるらしい。
 私は少し違った視点でも影響が出てくるのではないかと穿った見方を持っている。例えばこんなことがあった。機械のエンジニアを面接する際に同席したときのことである。応募者はマニラからやってきた男性である。面接する側はビサヤ出身のシステムエンジニアリング部門のマネージャだ。私にはよく分からなかったが、タガログ語で最初はやり取りしていたようだ。しばらくしてマネージャのLは言った。
「私はタガログ語が充分には分からないので、英語での会話にしたいがそれで良いか?」
応募者は「問題ない」と応じ、以後英語での面接になった。
 タガログとビサヤでどれほどの違いがあるのか、私にはわからないが、お互いの出身地が違う場合には英語を使った方がスムーズにコミュニケーションができる、と言う現実は我々日本人には理解しにくいことである。英語力の低下は外国人とのことだけに留まらず、この国では異なった地域の人達の間でのコミュニケーション手段としての機能低下にも関係してくるのではないか。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

April 20, 2006

第111話 レイテその後

 レイテの地滑り災害もかれこれ既に2ヶ月以上が経った。一般には通行止めとなっていた峠越えの道路も既に通行できるようになったようで、A氏は被災地ギンサウゴン向かった。写真はその時の様子である。
Photo
 セブからスーパーキャットで約2時間半、オルモックには彼の弟がいる。そこから約2時間で峠を越えギンサウゴンに近づくと災害の爪あとが今だに修復できないまま残されている。
Photo_1
 写真からは現地のモニュメントで慰霊らしきことが執り行われているように見えるが、どう見ても緊張感がなさそうなところがいかにもフィリピンらしい。
Photo_2

| | Comments (0) | TrackBack (0)

April 18, 2006

第110話 フィリピンでの生産性(2)

 昨日のNNAの特集記事でラ・サール大学院のフレッド吉野先生の記事が掲載されていた。以下は少々長いが、その記事の引用である。
 ちょうど5年前に、教授に会社にお越し戴き、フィリピンにおける製造業の生産性、特に現地人マネージャの管理能力について討論をさせて戴いたことがある。ポイントは自己受容性が高く、課題達成への緊張感のなさが生産性の限界を招いているといった点で、やはり我々の認識と一致していたと思う。


 フィリピンを知る大学院教授フレッド吉野氏が、日系企業が当地でとるべき経営戦略について、苦言と提言を行う。
 日本貿易振興機構(ジェトロ)は最近、東南アジア諸国連合(ASEAN)とインドの日系企業を対象とした経営実態調査の結果を公表した。それによると、今後の事業展開でフィリピンへの生産拠点の移転を計画している企業はまったくないことが明らかになった。同様にシンガポール、香港、台湾も皆無だったが、中進国・地域として労賃も高いので進出希望がないのは十分理解できるが、途上国のフィリピンが袖にされたのはさびしい。なぜそんなに魅力がないのだろうか。
 嫌われた主な理由は、インフラ整備が不十分、不安定な政治と社会情勢、不透明な政策運営となっている。道路、港湾、空港は老朽化し混雑きわまりなく、経営学でいうボトルネックがひどい。モノを作って輸出するということは単に生産コストだけでなく、運輸などいわゆる取引コストを安くしなければならず、渋滞で時間や燃料代がかさむ状況は芳しくない。
 この取引コストという概念は1991年にノーベル経済学賞を受賞したシカゴ大学のロナルド・コースが初めて世に問うたもの。不安定な政治と社会情勢、不透明な政策運営は当然、取引コスト上昇の要因となる。警備のためにガードマンをたくさん雇ったり、環境基準があいまいで袖の下を払わされたりするのは経費の上乗せとなるから、経営者は単なる生産費だけでなくトータルコストでどこに投資したら一番得策か判断する。要するにフィリピンは経費が余計に掛かり不確実性(リスク)が高いので敬遠したいというのが、大半の日系企業経営者の考えだろう。
 フィリピンがさらに魅力を失っているのは、労働者の質が低い、あるいは近年著しく劣化しつつあるのも一因だ。技能を有するフィリピン人労働者はどんどん海外へ出ていく。医師、看護師、介護士、情報技術(IT)技術者だけでなく、最近は大量のパイロットや整備士が外国の航空会社に引き抜かれ、運航停止の便まで出る始末。フィリピン航空(PAL)ではすでに75人の経験豊かなパイロットが引き抜かれたが、これは全体の17%に当たる。中国、インドの経済発展によってアジアの航空市場は今後大成長することが見込まれ、この勢いは加速すると予想される。整備士にしても2000年以降、1,159人が外国企業に転職した。
 「優秀な数学、科学、コンピューターサイエンスの教師や研究者の流出も後を絶たず、国内に残っているのはクズばかり」という教育専門家もいる。しかも優秀な人材はいったん国を離れたら二度と戻ってこない。外国人である我々も三流の医師ばかりになったらおちおち病気にもなれないし、日本へ帰省するのにPALに乗るのが恐くなってしまう。国内に残っているフィリピン人の質を何とかしないとフィリピンの魅力はますます減じてしまいかねない。
 また政治家などによる不正、汚職、恐喝などが後を絶たず、権力を悪用したレントシーキング(賄賂を請求し許認可などを恣意的に行うこと)も日常茶飯事だ。ビジネススクールやセミナーでは、やれ企業倫理が大切だ、透明性やコーポレートガバナンスを遵守せよとか、一見まじめに議論しているがまったく実行は伴わない。教会のミサで敬けんな祈りを捧げている人が悪らつな詐欺を行っているのをしばしば見聞きするにつけ、この国の道徳・倫理と宗教はどういう関係になっているのか訝ってしまう。
もちろん誠実で立派な人もいる。通信最大手フィリピン長距離電話(PLDT)のパンギリナン会長は、人を採用するに当たっては倫理を最重要視すると言っている。大体、実業界で成功している人物の道徳性は一般より高い。ほかにもフィリピン大学を優秀な成績で卒業しながら、国を良くしたいと薄給でも政府機関に勤めるまじめな青年もいるが、数が少ない。
 今回のジェトロ調査で移転先として最も人気が高かったのがベトナムで17社。同国の2005年経済成長率は中国に次ぐ8.3%で、フィリピンの5%台をしのぐ。国民1人当たりの国内総生産(GDP)は現在750米ドルだが、フィリピンの1,000米ドルに追いつき追い越すのは時間の問題とみられる。ベトナムは第一次産業がしっかりしているので、中国やインドへ産品を輸出することもできるし工業化も進んできている。なんといっても、頑張り屋で手先が器用、賢い。労賃もフィリピンより低い。さらにインフラが充実してきた。またベトナムの工芸品が日本の女性に人気なのからも分かるように、くどい中国文化よりあっさりとしゃれたベトナム文化が日本人に合う。中国への対抗、敵対意識も強いので、逆に比較的親日的なのも魅力の1つだ。世界貿易機関(WTO)に加盟すればいっそう規制緩和が進み、ビジネスがしやすくなるのでは。したがって、フィリピンは早晩、ベトナムに追い越されることになろう。

 緊張感の欠如と危機意識の薄さ、そして現状をあまりにも肯定的に捉える価値観は一朝一夕に変わるものではないだろう。また、そのような意識を持った者はどんどん国外に出て行く。一体どうなってしまうのか。

| | Comments (10) | TrackBack (0)

April 15, 2006

第110話 フィリピンでの生産性

 フィリピンに進出している製造業にとって、フィリピンの市場性に期待して進出を決めたという経営者はまずいないだろう。多くの場合、地理的な要因、特恵メリット、人件費(このメリットは最早薄い)、関係先の進出に合わせて、などであろうが、人海戦術の製造業としては手先の器用さと属人的生産性の高さにも要因があるのではないかと思う。
 視力は抜群で不良品の識別能力も桁外れに高い。きちんと管理された状態の中で仕事をさせればかなり期待値に近い生産量を期待できる。そこにちょっとインセンティブの鼻薬を効かせれば、更に数量の上乗せも可能だ。ところがそう計算どうりに行かないのもフィリピンだ。
 加工区では多くの工場は24時間操業だ。夜中の工程現場はどのような状態なのだろう。
興味本位ではあったが、夜中に工場に行ってみた。その時間帯では、マネージャクラスは誰もいない。扉を開けて工程に入った。
 何と、ラジカセがガンガン鳴っていて、多くの者が歌を歌いながら作業をしている。日中はそのようなことは一切ないから、良くないことは知っていながらのことだろう。その証拠に私が入っていくと、誰かがスイッチを切り、歌声も止んだ。彼らにとっても日本人が真夜中に工程を覗きに来るなど、予想外のことだったに違いない。
 フィリピンで高い生産性が期待できるのは、きちんとマネジメントが出来た時だけである。

| | Comments (11) | TrackBack (0)

April 12, 2006

第109話 皆勤賞

 皆勤賞、あるいは精勤手当、こんな言葉は日本ではほとんど聞かれなくなった。私が小さい頃、町工場で働いていた母親は、毎月のように受け取るそんな名前の手当さえも家計の足しにしていた。時代は変わった。成果を出すことが重要で、毎日一生懸命頑張ったかどうかは今日では評価の対象外である。ところが人海戦術の製造現場では、毎日キチンと出社することはまだまだ重要な要素なのだ。その日の出来高が人間の数にある程度比例する限りは、従業員には休まず出てきてもらうことがとても重要だ。
 会社では半期ごとに年2回、無遅刻無欠勤の従業員に対して表彰を行っていた。いつも大よそ150人位の者が表彰されていた。たいしたものが貰える訳ではないが、数百ペソの記念品は彼女たちにとっては決して安いものではない。有休は買取りがあるから無欠勤に励むのは理解できるとしても、フィリピンの交通事情で無遅刻というのもなかなか大変なことなのだ。
 最近のわが国においてはフリーターの勤労意欲云々が取り沙汰されているが、賃金面だけでなく、モチベーションの面からも外国人労働者に定位置を奪われるのも必然の成り行きかもしれない。面倒なことや嫌いなこと、いやなことはしなくてもいいんだ、という風潮が蔓延している国からは、やがて仕事がなくなってしまっても仕方ない。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

April 10, 2006

第109話 10年ひと昔

 ここ数年、セブでも日本食レストランが増え、中身もグッと良くなってきているようだ。客の数以上に供給側が増えているのだろうから、質が上がるのは経済原則上の必然とも云える。
 私がセブに赴任した当時も日本食レストランはあるにはあったが、数は現在とは比べものにならないくらい少なく、中身も食材の制約上からか寂しかった。それでもウォーターフロントに行けば美味しい和食にありつけたが、値段はちょっと高く、高給取り?の我々でもそうしょっちゅうは行かれない。
 多くの経営者である日本人の陥る過ちは、慣れてくると現地人に任せてしまい、管理業務を手放してしまうところにある。そうなると、そのレストランの行く末はおのずと見えてくる。以下は私が体験した例であるが、これらのレストランは当然のことながら今や存在していない。
・ あさりバターを注文した。黒いツブツブが目立ったが初めは黒胡椒だと思った。なんと砂抜きを全くしていなかったのだ。
・ 主が最近姿を見せなくなったな、と感じ始めた頃から、日本人が好まない漁醤がどの料理にも使われるようになった。結構流行っていた店だったが、当然日本人は敬遠し、やがてローカル客が目立つようになり、いつの日か無くなった。
・ 日本酒を頼んだら、酢が出てきた。当然、こんな店が今あるはずもない。
いくらセブでもこのような店はもはやないだろう。客の数はそう変わらないのだから、供給側が乱立すれば全員がハッピーになれないのは飲食店の宿命だ。成功するのは容易ではなさそうだ。

| | Comments (3) | TrackBack (0)

April 07, 2006

第108話 公的機関のカツアゲ

 フィリピンで操業していると、無遠慮な寄付の無心もさることながら、言いがかりとも思える要求も少なくない。先般のNNAの記事では、ヨコハマタイヤ・フィリピンでは関係者の方のご努力で不当な課税を撤回させたという記事を目にした。(以下引用)


ヨコハマタイヤが非関税地域であるクラークから国内市場向けに製品を出荷する際には、関税の支払い義務が生じる。ただその課税対象は、同社が実際に輸入したゴムなどの原材料であるべきだが、一部は製品のタイヤそのものとなっていた。このため、最大で10倍ほどの開きがある異なる税率に基づく関税額の支払いを要求された同社は、政府関係機関にその不当性を説き改善を求めてきた。しかしその一方で、関税納付をこれまで続けてきたという。

私が滞在していた時にこんなことがあった。日本から溶剤を輸入した時に、手違いで一部の書類で揚げ地の記入ミスがあり、まずは品物の通関が止められた。手違いの非は認めなければならないが、それに対してどう出たか。
 カスタムからは何と約150万ペソのペナルティを要求してきたのである。書類上のミスならば再提出させるとか、そもそも根本的な問題ならば輸入を認めない、など違う対応になりそうなものだが、書類上のミスをペナルティという名のもとでカネで解決させると言うやり方が本当に存在するのか。
 品物が来なければ生産はストップせざるを得ない状況では、言いなりになるしかない。フィリピンでは公の機関によるカツアゲは事業リスクの中に織り込んでおかなければならない要素のひとつだ。

| | Comments (1) | TrackBack (0)

April 04, 2006

第107話 フィリピン人の感性(2)

 目の前の椅子なら、いくら使ってもらっても減るわけでもないが、モノによってはそうもいかない。例えば電話などは使われれば出費が伴う。実は滞在していた住居では通話料がおかしなことになっていた。どうも市外通話の料金がそれなりにかかっているようなのだ。固定電話から駐在している日本人がフィリピン国内の市外に電話することはまずない。日本国内に電話する時は、グループ会社内の専用回線が使えるので会社からかけるから、そもそも家にある電話は、市内通話以外はほとんど受信専用のはずなのだ。
 となると、怪しいのはメイドとその関係者ということになる。何しろ日中は日本人は誰もいないのだ。メイドはそれぞれ遠くのプロビンスから来ているし、悪気はなくても“そこにあるんだから”くらいのつもりで使うことは十分考えられるのだ。
 遠くから来てるんだから、たまには電話くらいいいじゃないか、とも思ってもやりたいが、このようなことは往々にして蟻の一穴になりがちだ。
 我ながら冷たい奴だと思いながらも、以後は暗証番号を入れないと市外通話は出来ないようにしておいた。この国ではそれくらいの用心は必要である。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

April 03, 2006

第107話 フィリピン人の感性

 私のデスクの前には椅子が二つあった。ちょっとした話し合いのために来た人が座れるようにしてある。フィリピンでは日本と逆で部下を立たせて話をすると、部下が上司を見下ろす関係になり、周囲が誤解するそうだ。
あるとき、私が席に戻るとTシャツ・ジーンズ姿の女の子がそこに座っていた。少なくとも名前も顔も知らない人だ。何の用事かな、と思いながら彼女の方を見ると、ニコッと軽く会釈するだけで、特に用件を切り出すわけでもない。
 暫く経っても何かを言うわけでもないので、隣にいる秘書が用件を聞いているかもしれないと思い、聞いてみても、知らないと言う。そのうち彼女は携帯をと取り出し、テキストメールを打ち始めた。そうなるとどうも目障りだ。
さすがに隣にいた秘書が彼女にビサヤ語で何かを聞いている。一言二言の会話の後で彼女は立ち上がって離れて行った。
「彼女は採用面接に来ました。待っている間、そこの椅子が空いていたので、座っていたようです。」
フィリピン人には、そこに何かがあって、誰も使っていなければ、使っても構わない、という考え方がある、と経理部長のYは言っていた。日本で空き家になっている私の山小屋についても彼曰く
「空き家のままにしていたら、もう誰かが住みついているんじゃないのか?」

| | Comments (10) | TrackBack (0)

« March 2006 | Main | May 2006 »