« May 2006 | Main | July 2006 »

June 27, 2006

第127話 日本に来る研修生(2)

 そんな彼女たちには帰国後、ある”縛り“が待ち受けている。出国前に彼女たちはある書類にサインをさせられている。
「研修終了後1年以内に退職する場合は、研修費用を弁済しなければならない」
企業にしてみれば、少なからぬ費用をかけて研修させたのに、すぐに辞められては無駄な投資になってしまうし、オペレーション能力の向上にも繋がらない。彼女たちにしてみれば、これでは実質1年間は退職することはできないが、サインをするときはロクに読まずにサインしている場合がほとんどだ。
 それでも彼女たちにとって、日本は印象の良い国だそうだ。日本人の多くは至って外国人に親切である。格差社会ではあっても階級社会ではない日本では、彼女たちが疎外感を味わうことのないよう丁寧に接する。休日にはどこかに連れて行ってやったり、食事をご馳走になったり、案外至れり尽くせりなのだ。我々にはどうとも思わない会社の食堂のランチも好評で、特にコメが美味しいというのは誰もが言うそうだ。それと我々にとっては当たり前のことだが「どのクルマも真っ直ぐ走っている!」とか、「道路がとても滑らかだ」などと関心していた者もいた。
 日本に行く前は「金持ちの国」「礼儀正しい」くらいの印象だった日本に、帰国後は「親切」「きれい」「美味しい」という印象が加わる。

| | Comments (2) | TrackBack (0)

June 26, 2006

第127話 日本に来る研修生

 フィリピンの日系企業では、製造現場の現地でのオペレーション能力向上を目的に、現地の製造現場のリーダークラスの社員を日本に連れて行き、研修させることが少なくない。
 多くは女性社員である。彼女たちにとって、僅か2~3週間の滞在ではあるが、日本に行くということはどういうことなのか。少し誇張されているだろうが、日本に対するポジティブなイメージを持っている場合が多いから、まずは行って見てみたいという興味。それと少なからず、臨時収入が入る、ということも見逃せない。
 まずは支度金が支給される。滞在中の賄いは全て現物で支給されるので、マネージャクラスが出張したときの日当とは異なるものの、小遣い程度の日当を滞在中も受け取ることが出来る。
 支度金は、本来渡航に当たっての準備の為の費用であるが、一旦彼女たちの手に渡ってしまえば、支給目的などはどうでもよい。ほとんどの場合、親兄弟、親類縁者に分配されて、瞬く間に消えてしまうことが多い。だからだろうか、空港まで家族や親類が大挙して見送りに来る光景も珍しくない。
滞在中のささやかな日当はどうかというと、彼女たちはほとんど手をつけない。スナック菓子を買う程度だ、それでも帰る頃には秋葉原でひとつふたつ電化製品を買い、残ったお金は再び親兄弟に渡る、というのがティピカルなスタイルだ。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

June 22, 2006

第126話 リベート

 フィリピンで仕事をしていると、贈収賄がこれほどまでに公然と当たり前のようになされているものかと、驚かされることが多い。日本でも性懲りも無く官公庁を中心に”伝統“となっているようだが、絶対バレないように外堀はキチンと埋めるのが常である。
 先般記事にした家電製品の社内販売はCORPの管轄であるが、この家電業者の社長によれば、CORPの責任者は当初売上比10%のリベートを要求したそうだ。最終的に5%で妥協した、と言っていたが、その5%で社員にもっと安く買ってもらう方がどうみても健全だ。
 梱包用の段ボーボールを売り込んできた業者がいた。彼が提示してきた価格はメリットが全く無く、興味が感じられない。彼は何を勘違いしたか、
「いくら欲しい?要求には出来るだけ応じるから言ってみてくれ。」ときた。
ほう、恐らくこんなやり取りはローカルのマネージャ達との間では日常茶飯事だろう。そして、こういった提案には応じているマネージャも少なくないだろう。
 このような関係でのビジネス上の繋がりは、互いの信頼関係の上でのものではないから、長続きなどするはずがない。フィリピンではくっつくのも簡単だが、裏切ったの裏切られたのと、リレーションシップが続かないことが多い。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

June 19, 2006

第125話 アイランドホッピング

 セブでの代表的なアクティビティのひとつであるが、楽しい思い出を持っている人もいればその反対の人もいるだろう。私はどちらかと言うと後者のほうだ。そもそもあまり海が得意でない、ということもあるが、それだけでもない。
 日本人プライスで吹っかけてくるから、乗る前の交渉が必要で、まずこれが面倒。しかも沖合で再び交渉しなければならないことだってある。
「旦那、すみませんが、○○島まで行くためには燃料が足りないかも知れません。手前に××島があるのでそっちでいいですか?」
おいおい、また交渉かよ。××なら以前に行ったことあるし、100ペソ追加すると言ったら、「OK, I’ll try.」だと。
 マクタンとボホールの間にある最近有名な島に行ったときのこと。来たときと違って帰りには引き潮になってしまい、ボートは100メートルくらい沖合いに浮かんでいる。濡れるのを覚悟でジャブジャブとボートを目指して浅瀬を歩き始めたら、その島の子供たちが小船を漕いでやってきた。聞けば一人20ペソでボートまで連れて行くという。濡れるよりはましか、と小船に乗った。さて、ボートまでもう少し、というところで少年は、一人50ペソくれと言い出した。重くて疲れたとでも言いたげな仕草である。既にどうやって金を吸い上げるかを子供にして実践しているのだ。
‘上陸料’込みと考えれば仕方ないのかも知れないが、昼食のBBQも、そこで取れた魚介類にしては結構高い。冷えていないサンミゲルでも想定外の値段であったし、請求書の計算も良く見ないと案外怪しい。それに何故かこの辺りの島々の子供たちは片言ではあるが、日本語で話しかけてくることが多い。既に“素朴”というのとはちょっと違った印象だ。

| | Comments (118) | TrackBack (0)

June 15, 2006

第124話 借金漬け

フィリピン人が金の無心をしてくる場合、だいたい決まって「貸して欲しい」と言ってくる。額面どおり「貸す」日本人はいないと思うが、要は「くれ」と言う事だ。金を借りるにあたって、本当に返せるのか、或いは返すつもりがあるのか、或いはそこまでも考えていないのか。
不思議な光景を見たことがある。会社のキャンティーンで昼休みに家電販売業者の社内即売会があった。電気釜や扇風機、テレビなど、高度成長期初期の3種の神器を思い出さずにはいられない。かなり多くの社員が集まり、市場価格より安いのか、かなり売れているようだ。市場価格より安いからといって、そんなに飛びついてしまってよいのか。
聞けばローンがきくという。となると金利だ。総務のものに聞いてびっくりした。金利はなんと35%。サラ金も唖然とする高金利。本当に彼女たちは返せると思っているのか。総務の女性社員はさすがにそんな金利ではお金は返せないという。当たり前だ。給与上昇率は年10%もないのだから。
ニコニコと嬉しそうに電気釜を抱えて持ち帰る彼女たちに何ともやりきれない視線を送るしかなかった。

| | Comments (30) | TrackBack (0)

June 13, 2006

第123話 アコ、カワイソ!

 日本人が気前がいい。金を持っていながらケチケチすることはどうやら大和民族の美徳に反するようである。当然、その懐にはフィリピン人の熱い視線が注がれる。
 セブカントリークラブのキャディLは腕前もなかなかで、しかも陽気で底抜けに明るい。ゴルフクラブのちょっとした修理もやってのけてしまうし、なかなか便利なユーティリティボーイでもある。そんな彼も時々金の無心をしてきた。言い訳は大概は家族の入院であるが、子供の誕生日というのも時々はさまる。が、申し訳ないことに私は記憶力は比較的あるほうである。
「Mr.○○, today, It’s my wife’s birthday. But…アコ、カワイソ…」
ん~、確かこの前も・・・
「Oh…you are so happy! Two wives? You told me the same thing last month!」
一瞬慌てていたが、悪びれた様子もない。
「Ah, no no, Last time, that was my daughter’s birthday!」
既にバレていることは、彼も気がついているが、それでも屈託なく「アコ、カワイソナ~」を連発している。
 2ヶ月に1度くらい、こんなやり取りの挙句、キャディフィと併せて500ペソほど渡すのが流儀であった。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

June 10, 2006

第122話 社員の引止め策

 フィリピンはジョブホッピングの世界である。実力があろうがなかろうが、誰もが自分のキャリアを目一杯上げ底にして、転職を試みる。すでに高給取りのマネージャクラスでも言わずもがな、である。
 クラークやテクニシャンクラスなら代わりはいくらでも居るが、マネージャクラスになると辞められた後の穴埋めは容易ではない。そうならないための、定着度を確保するための端的な算段は給与アップであるが、これがそう簡単ではない。どうしても辞めて欲しくないマネージャだけを厚遇しようとすると、本人にも迷惑な話になってしまうのだ。そう、クラブメンタリティである。自分だけが組織の中で上昇することは妬みの対象になることでしかない。賢明な連中はこれを好まない。結局マネージャ全員を厚遇せざるを得なくなるのだ。かといって青天井には出来るはずもない。
 ここで活躍するのが、マネージャへのローンの利子補給制度である。マネージャといえどもそこはフィリピン人である。金はなくても欲しいものはどんどん買いたい。そこで会社がバックアップして、提携している銀行との間でローンを組ませ、家や土地、車を買えるように道筋をつける。数年間のローンで彼らは資産を手に入れる。すでに借金漬けで足抜きが出来ない図式が出来上がるわけである。
 私が知り得る限り、このローンを利用していないマネージャはいなかったはずだ。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

June 07, 2006

第121話 大統領がやってきた(5)

 この日を境に(暫くの間、ちょっとした異変が起きた。知らない人からあちこちで挨拶されるのだ。身に覚えがない。ある日、空港からタクシーに乗ったときとこと。運転手曰く
「旅行で来たのかい?」
面倒くさいから“そうだ“と答えた。
「俺にも日本人の友達がいるんだ。MEPZ(加工区)で仕事している日本人だ。」
「ほう、誰だい?」
「MR.○○っていう人だよ。」
・・・。私と同じ名前だが、少なくとも私はこの運転手知らないし・・・加工区に同じ名前の日本人、いたっけ?
また、別の日のこと。旅行に行こうと思ってマクタン島内の小さな代理店を訪れた時、名前を記入しようとしたら、
「あなたは Mr.○○, でしょう?」
「・・・!えっ、どうして?」
彼女は微笑みながら、
「あなたはここマクタンでは有名ですよ。」
え~~?うーむ、思い当たることがあるとすれば、大統領が来た日の翌日の新聞か。確かに写真の端っこにたまたま私も写っていたが、主役じゃないし。でもタイミングからはそれしか思い浮かばない。今でもとても不思議に思っている。

| | Comments (27) | TrackBack (0)

June 04, 2006

第121話 大統領がやってきた(4)

どうやらここに来る前から既にかなりスコッチを飲んでいたとみえ、大統領は酒の匂いを存分に振り撒きながら、勧められるままにさらにグラスを傾けている。さて、彼が我々に話しかけてきた内容は全く意外な事柄だった。
「キミたちの周りに誰か良からぬ者はいるか?もしいれば、言いなさい。私が力になってあげよう。」
あまりの予想外の言葉で、返事の返しようがなかった。相当酔っているとしか思えない。或いは、この頃からフエテン賭博がどうだこうだと取り沙汰されていたから、周囲にいるものが信用できない者達ばかりだったのかもしれない。
 それでも記念撮影では、大勢の社員が歓声を上げて取り囲み、まだまだ人気の高いことを窺わせた。一行が帰る頃には、既に太陽も大きく西に傾き、やはり沈み行くイメージとダブって見えてしまうのだった。01_02_9

 やれやれ、セレモニーはとにかく無事に終わった。因みに、この日は私の誕生日。1国の大統領が私の誕生日を祝いに来たのだと、勝手な思いを巡らしていたら、事務所の女性社員たちが次々と
「Happy birthday, Mr.○○.」
と頬にキスしに来るではないか。この年にもなれば自分の誕生日なんてどうでもよいと、気にもしていなかったが、大勢の女性からたて続けにこのようなもてなしを受けたのは人生の中で後にも先にもこの時だけだ。

| | Comments (53) | TrackBack (0)

June 03, 2006

第121話 大統領がやってきた(3)

 大統領の訪問に先立って、事業所の責任者はテレビ局のインタビューを受け、フィリピンへの投資の有意性を語っていた。新聞記者たちもかなりの数が押しかけてきている。あとは大統領の到着を待つばかりなのだが。が、なかなか来ない・・・
 大統領はヘリコプターでやってくるとは聞かされていたが、いつどこに降りるのかは、我々が知らされる由もない。そうこうしているうち、午後3時も回った頃、周囲がにわかに慌しさを増してきた。どうやら近くまで来たらしい。会社の外では歓声が上がっている。さっきまでダラッとしていた鼓笛隊がけたたましく演奏を開始した。近隣の会社の社員も噂を聞きつけて、大勢集まっているらしく、塀の外も賑やかだ。
 鼠色の4WDはあっという間に、勢い良く正門を突破して来た。ところがクルマから降り立ったその人物はおよそ大統領らしからぬ身なりである。カジュアルな服装にサングラス。まあ、息抜きのついでに来たのだろうから、そんなものかも知れぬ。A農業相を連れていたが、どうやらここに来る前はボホールで農業施設の視察をしていたらしい。皆、靴が泥だらけだ。地元の有力者も勢ぞろい一同に会している。来るなり周囲を見渡して
「リリア(PEZAの長官)は来てないのか?」
彼女は数日前に来れない事を伝えてきていた。ちょっと不満そうな大統領。それにしても雰囲気がおかしい。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

June 01, 2006

第121話 大統領がやってきた(2)

 大統領の来訪となると、まず大変なのは警備関係だ。SP達との打合せは綿密を極めた。訪問時間は大体何時という程度で、正確な時間は知らされない。まあ、どうせフィリピンタイムだから時間ピッタリに来るとも思っていなかったが。そのあたりはマクタン第2ブリッジの開通式でも経験済みである。
 見慣れないものを見た。SPの中には左の胸に赤いワッペンのようなものを貼り付けているものがいる。総務部長に尋ねた。
「あの赤いシールは何の意味だい?」
「あー、あれは万が一の場合に、撃つなら俺を撃て、という目印なんですよ。」
大統領のSPとは本当に命を張っている。大統領、しっかりしてくれ!
 食事や飲み物、手土産、アシュレットなど段取りも全て整い、近くの学校からは大勢の鼓笛隊までやってくる手はずになっている。後は当日を待つだけである。この大統領に対する見方はその頃から既に賛否様々であったが、現役の大統領がやってくる、というのは社員にとっても鼻が高い出来事らしく、誰もが楽しみにしているようだった。
 さて、当日である。いつ現れるか分からない大統領ではあるが、日曜日にもかかわらず、我々は朝から待機をしていた。休日とはいえ、ほぼ社員全員が会社に来ている。誰もが大統領の姿を間近で見たいのだ。当分の間、彼らの自慢話になることは間違いないだろう。鼓笛隊の練習は朝から何度もやっていたが、さすがに日が高くなるにつれてダレ気味である。このときの先頭でバトンを持っていた女の子(多分15歳くらい)はケタ外れに可愛い娘で、同僚駐在員たちも盛んに不埒な視線を送っていた。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

« May 2006 | Main | July 2006 »