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September 01, 2006

第145話 日本語手当(3)

 日本語レベル試験の受験者リストが出てから、彼Y部長の落胆振りといったらなかった。平均的な日本人の場合、落ち込むとプライドも一緒に沈んでしまう。ところが、そのような場面でもフィリピン人はプライドまでダウンしてしまうことはない。
 彼はその日の朝から私とは口を聞こうとしない。指示や命令にはただ頷くだけで、やることはやるがコミュニケーションを拒否していることは明け透けに分かる。見ようによっては非常に子供っぽい。が、しかし、日本人ではない。どう受け止めているのかは、我々の感性だけで推し量り決め付けては物事は解決しまい。
「J課長の試験のことで何か言いたいことがあるんじゃないのか?」
彼は待ってましたとばかりに堰を切ったように捲くし立てた。
「自分は読んだり書いたりは出来ないが、日本人の言っていることはほとんど理解できている。J課長よりも本当の理解力は自分の方が勝っている。彼の方がレベルが1ランク上になるのはおかしい。」
 このとき思った。フィリピン人は単なる駆け引きの自己主張ではなく、本当にそう思っているのだ。客観的に自分を見つめることが出来ない、或いはそうしないということは時には強みでもあるが。
 フィリピン人と表面的に仲良くなるのは日本人なら誰でも出来る。彼らが建前上日本人を尊重してくれるからだ。でも、そこから先は案外大変だ。

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