« 第404話 ヌーディストビーチ | Main | 第406話 ハンバーガーとビール »

April 21, 2011

第405話 ミロシェビッチ

 Nozica プライベートルームでは、1階の玄関を通ると、オーナーのお婆さんと出合う→ブランデーを飲まされる、ということになるので、努めて2階の出入り口から出たり入ったりしていたが、3日目の朝、バスルームの掃除に来た彼女とパッタリ出会ってしまった。彼女の盛んな飲もうという目配せに抗し切れず、お決まりのコースになった。

 互いの言葉は10%も通じない。こちらの英語の一部分を彼女が理解し、彼女のドイツ語(多分)の極めて一部をこちらが理解する、といった非常にか細いコミュニケーションだが、互いに何とか理解しようとするところには、ちょっと意義があるようにも思えた。

 やがて彼女がアルバムを持ちだしてきた。どうやら彼女の亡くなった(多分)亭主や息子や娘たち、孫たちの写真などのようだ。恐らく以前の内戦では、旦那さんだけでなくこの中の誰かが亡くなったのだろう。写真の中を一人ずつ指差して彼女は何某か呟いている。アルバムの中にはドゥブロブニクが盛んにセルビアから砲撃された当時の生々しい写真もあった。写真を見つめながら彼女がポツリと唸った言葉は「ミロシェビッチ!」。

 セルビアにも言い分はあるだろうから、クロアチア側が一方的に被害者とも言えないかもしれない。こういうときは同情の気持ちは持ちつつも、暫く沈黙し、時間が流れるのを待つしかない。それでも彼女が写真を見つめていた時の眼差しには間違いなく憎しみが充満していたことだけはよく覚えている。

|

« 第404話 ヌーディストビーチ | Main | 第406話 ハンバーガーとビール »

Comments

ミロシェビッチとは、民族浄化のカドで国際法廷で裁かれた旧ユーゴの大統領ですな。憎しみの連鎖は永久に消えることはないと思いますね。日本人がロシア・旧ソ連に持つ感情よりももっと根深いように思います。

Posted by: 旧エゾシカ | April 21, 2011 at 02:16 PM

ミロシェビッチは裁判の終わらぬうち、亡くなったようですが、セルビアでは今でも相当数の支持者がいる、というから複雑ですね。

Posted by: 富嶽庵 | April 21, 2011 at 03:40 PM

Post a comment



(Not displayed with comment.)




TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/91498/51450317

Listed below are links to weblogs that reference 第405話 ミロシェビッチ:

« 第404話 ヌーディストビーチ | Main | 第406話 ハンバーガーとビール »